楽譜は出版社によって違うことがある。というのは、これまでもお話したことがありました。では、校訂版はよくないのでしょうか。今回はそのことについてお話したいと思います。
ショパンコンクールで推奨されているのはエキエル版です。「エキエル版」というのは、「ヤン・エキエルとパヴェウ・カミンスキが、ショパンの自筆譜から弟子の楽譜に書き込まれたメモまで、あらゆる資料を精査・比較・検討して編纂した原典版(通称エキエル版)」のことです。
この文章について補足説明しますと、作曲家は、弟子に弾かせたり、練習していくなかで、出版後も楽譜を書き換えることがあります。そのため、いろんな資料があり、それらの資料のどれを選ぶかで音やアーティキュレーション、解釈が変わってくるから、どのように楽譜にするかがとても重要になるのです。
コンクールやオーディションの場合、音が違うと、本人がミスタッチをしたのか、選んだ版(エディション)が違うのかがわからなくなり、ややこしくなります。アーティキュレーションなどの解釈まで広がると、審査の基準がわかりづらいため、あらかじめ推奨される版(エディション)を言われるのです。
ショパンのほか、リストの場合、ブダペスト版が信頼性があるということでコンクールで推奨されることが多いです。しかしながら問題なのはそのお値段。1冊1万円を超える楽譜がほとんどです(世界トップレベルの高級楽譜なのです)。また、指番号やペダルの記載が少ないので、それでなくてもリストは難しいのに、どうやって弾けばよいかわからない、となります。
画像はリストの「愛の夢 第3番」の一部分です。ブダペスト版には指番号が書かれていません。それでも弾ける人はいいのですが、初めて弾くとき、「どうやって弾くの?」となるでしょう。そんなときに役立つのが校訂版です。ペータース版(ザウアー編)は、リストの高弟ザウアーが校訂したものです。ザウアーは両手で弾くような運指にしています。一方、全音は片手ですべてを弾く運指になっています。いろんなピアニストが弾いているのを見ましたが、両手で弾く人、片手で弾く人、さまざまでした。
弾いてみたい曲が弾けないとき、指番号を変えることで弾けるようになることがあります。ピアノを習っている方は、先生の薦める版を選ぶことになりますが、独学で学んでいる方は、楽譜売り場にたくさん楽譜がありますので、いろんな版を見て、楽譜を購入されるとよいかと思います。
そこで今日の結論。校訂版は校訂者を選ぶと、すごくいいです。原典版は校訂の内容に疑問を感じたときや原典を知りたいときに見る重要な楽譜です。コンクールなどでは版を指定されますので、迷わずそれを選びましょう。

