今日は「音大は必要なのか?」について、大学で働いた経験がある私なりの考えをお話したいと思います。音大に進学しようか、やめようか、悩んでいる方にご参考になればと思います。
「大学とは?」
まず、「大学とは何か?」からお話します。これを理解しないと、音大が必要かどうかは主観の判断にしかなりません。
大学とは「学位(ディグリー)」を与えられるところです。学位というのは、「学士」や「修士」「博士」などのことです。学位は専門学校やお稽古事では取得できません。この大切なことを日本では意外と忘れられがちです。大学は卒業するだけの場所ではなく、「学位」を取るための場所であり、それが専門学校との一番の違いです。
「学位」を取得するためには?
音大であれ、一般の大学であれ、大学では「履修登録」をして単位を取得します。大学に行かれた方はご存じだと思いますが、高校と違い、大学では自分で時間割を作ります。
大学に入ると、「シラバス」という授業計画の資料を見ることになります。(昔は冊子でしたが、今はほとんどインターネットでの閲覧です。)「一般教養科目」と「専門科目」に分かれ、さらに「必修」と「自由選択」に分かれます。学位を取得するためには、必要な単位数を履修しなければならないため、好きな科目ばかり履修するわけにはいかないのです。
私が音大に入学したときに感じたのは、「音大だから音楽ばかり勉強するわけではないんだ。」ということでした。でも、3年生以上になると、履修状況によっては専門分野をたくさん選択できるようになります。ドイツ語やフランス語、イタリア語を選択して、留学する人もおられました。
さらに「教員免許状」を取得したい人は、それに必要な科目を履修しなければならないため、実技試験が多い音大生のなかには、「教員免許はいらないから、最低限の単位で卒業したい。」という人もいます。当然のことながら、科目を履修すればするほど、授業時間はもちろんですが、試験の数も増えます。成績表はずっと残りますので、合格できる範囲で履修しましょう。
「音大卒業後はどうする?」
音大に進学したことにより、普通の大学より、就活が難しいか?といえば、一般企業への就職に限っていえば、答えは「イエス」だと思います。それは、大学への求人数や職種が他大学と全く違うからです。
でも、音大独特の求人もあります。音楽関係の仕事については、専門的な分野での求人があります。ただし、一般就職にスクリーニングがあるように、音楽分野では「オーディション」があったりします。
「大学名は最終学歴」
これも意外に忘れられがちですが、「転職」のときに痛感するのが「学歴」です。「最終学歴」というのは、ずっと続くのです。就活するたび、履歴書を作るわけですから、これも音大に限ったことではありません。
まとめ
音大に行くかどうかを考えるときは、「音楽」という分野で学位が欲しいかどうか、「音大卒」という肩書が必要か、だと思います。これからの時代、AI技術がますます進化して、音楽系に限らず、人々の働き方が一転すると思います。その変化のなかで、自分がどうしたいかをその都度、考え、選択していける柔軟な生き方がこれから求められるのではないかと考えます。