ダウン症のこどもに与える音楽の影響

ホテル演奏

今日のテレビに、ダウン症の女の子、菜桜(なお)さんとお母様が出ておられました。菜桜さんはモデルとしてパリコレにも出演されました。生まれてすぐダウン症と診断された菜桜さんは、いくつもの合併症があり、小さいころから40回以上の手術を乗り越えてきました。生まれつき筋力が弱く、まっすぐな姿勢を保って歩くことが難しいそうですが、ウォーキングの練習を積み重ねてきたそうです。今は福祉作業所でティッシュペーパーを詰める仕事をしておられます。

 

話は変わりますが、以前、ホテル演奏をしていたときに、喫茶室から大きな叫び声が聞こえたことがありました。普段なら、ピアノの音色が流れる空間のなか、お客様の静かな語らいがある、午後のひとときですが、その日は違っていました。驚いた顔のお客様もおられました。私も演奏しながら、「どうしよう・・。」と思っていました。(上の写真はイメージです)

 

ピアノ演奏には休憩があって、一人の女性がピアノに向かって歩いてこられました。

「ごめんなさい。うるさかったでしょう?でも、ウチの子は、こんなきれいな場所に来たのは初めてで、貴女の素敵なピアノに合わせて、ダンスしていたんです。今は疲れて寝ています。ウチの子はダウン症なんです。今日は、ほかの施設のお友達も一緒で、皆さんにはご迷惑だったと思います。でも、私も、こんなきれいな場所に足を運んだのは本当に久しぶりで・・。」

 

このお話をほかのお客様も聞いておられたと思います。私の演奏にそんなに感動してくださるなんて、私のほうが恐縮してしまいました。再び静けさが戻ったなか、ほかのお客様も、そのお母様とお子様も、最後までピアノ演奏を聴いてくださいました。そして、演奏が終わったとき、拍手をいただき、その女の子がお母様と一緒に御礼を言いに来てくださいました。楽しんでいただけて本当によかったです。

 

スペインのアルメリア大学の教育研究チームによると、音楽を取り入れた活動が、ダウン症のこどもたちの感情への理解や感情表現の力を高め、総合的に感情の発達を後押ししたという結果を発表しています。音楽を通して「楽しい」「嬉しい」と思えるきっかけにつながるように願っています。