ピアノを習っている人にとって、誰しも憧れの曲があると思いますが、ショパンの「幻想即興曲」もそのひとつでしょう。最初の音から、「わー、かっこいい!」と思いますよね。
この曲、実はショパンは世に出したくない曲でした。「私の死後は燃やしてほしい。」と言い、ショパンの生前には出版されなかった「遺作」です。
ショパンの遺言にそむいて、友人のフォンタナという人が手を加えて出版したのですが(フォンタナ版)、長い間、ショパンの自筆譜は見つかりませんでした。ところが1962年、アルトゥール・ルービンシュタインによって発見され、相違が多いことがわかります。
面白いのは、自筆譜が見つかったあとも、フォンタナ版の楽譜が親しまれていたため、そちらのほうが有名になってしまったことです。
以前にもこのブログで書きましたが、この曲は「ポリリズム」が特徴です。左手と右手が異なるリズムで演奏されます。ドビュッシーの「アラベスク」もそうですね。ズレるところと重なるところが、唐草模様のように絡み合い、きちんと定期的に重なるリズムとは違った、割り切れないものが、心理効果を与えます。
最後に・・冒頭に書かれているのは「Allegro agitato.」。アジタートは「せきこんで」「心が動揺して」「興奮した」という意味で、ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」の第三楽章も、「Presto Agitato」と書かれています。お話は尽きませんが、今日はこのあたりで。